2021/09/24 18:32


ある日のことです。たまたま庭にいた私に近づいてきて、深々とお辞儀をし、 「早島先生、本当にありがとうございました。」 と爽やかな声でお礼を述べる、明るい表情の女性がいました。

「おや、誰かしら?」 と思って、私は、 「失礼ですが、どなたでしたか?」 と尋ねたのです。すると、 「あら、まあ、先生、お忘れですか? ちょうど三週間前にお目にかかって、すぐさま導引術を始めたSです。」と言うではありませんか。

たしかに、よく見ると、それは三週間前に道家道学院総本部に現れた、五十六歳のSさんだったのです。

「おかげさまで、みんなから十歳は若返ったと言われるんです。ウフフッ。」 そう話しながら、Sさんの顔からは、思わず笑みがこぼれています。

Sさんは、たしかに十歳くらいは若返っている上、元気で、ハツラツとした表情をしています。髪型も変わり、服装も若々しくなり、明る目のお化粧もしているので、私はすっかり見違えてしまったのです。

長年の心身の不調の相談に、Sさんがやってきたとき、私はその主な原因は、腎臓の機能の低下にあることを指摘し、そして「気のトレーニング」の「導引術」に真剣に取り組めば、必ず良くなりますよ、と述べました。

Sさんは私の言葉を素直に受け止め、その日のうちに、さっそく導引術を開始しました。そして毎日熱心に続けて、わずか三週間で劇的に若返ったのでした。

しかし、Sさんのケースは、けっして特別なことではありません。私が学長を務める道家道学院で学び始めた人は、早い遅いという差はありますが、みんな心身の不調が解消し、明るく元気になり、そして若々しくなっているのです。

肥満気味の人の場合は、すぐに五キロや十キロはやせています。
逆に、やせすぎの人は、適正な体重に変わっていきます。

そして、いわゆる中高年の人の場合は、Sさんの例に見られるように、まわりの人から、「あなたは実際より十歳くらいは若いですね。羨ましい。」 などと言われるようになるのです。

「気のトレーニング」である導引術を行うと、このように、体が健康になり、病気は良くなり、老化を防ぎ、若返りができます。 それはいったいなぜでしょうか。

その理由を一言で言えば、「元気」が体じゅうから湧いてくるからです。 別の言い方をすると、全身の細胞が新鮮な「気のパワー」を得るからです。

医学書などには「細胞が全部入れ替わるには七年かかる」と書いてありますが、導引術を行えば、その日から、たちまち変わるのです。

ふつうは一週間や二週間で、明らかに変わっています。

変わるのは細胞ばかりではありません。血液や骨も変わります。人間の体というのはどの部分も共通していて、骨も、皮も、肉も、血も、みな同じだからです。 導引術の行法をやって、疲れはその日のうちに取りためないようにし、たまった「邪気」を外に出してしまえば、血がきれいになります。

血がきれいになれば、骨や細胞や皮膚も、みなきれいになる、というわけです。
そして若くなろうと思って、気持ちを込めて一生懸命にやれば、必ず若返ってくるのです。

そうです。 「その日から変わる。」
「効果が大きい。」
「人に頼るのでなく、自分で体を動かして変わる。」
「心と体がともに甦り、元気が湧いてくる。」
「気持ちを込めて、本気でやれば、その効果が早くて大きい。」
――それが「気のトレーニング」である「導引術」の大きな特徴なのです。

そしてまた、健康法を超えた「超健康法」であると、多くの人から呼ばれているゆえんでもあるのです。


第1章 「気」が体と心を整える

  • 「新しいウォーキング健康法」のルーツは導引だった
  • 紀元前二世紀の「導引図」の発見に世界が驚いた
  • 「五禽の戯れ」(五禽戯)という「導引」健康法
  • 無意識のうちに「導引」を行っている事実
  • ツボを刺激しながら充分な呼吸を行う、現代人のための修練法
  • 「気」は、ほぼすべての現象に関わっている言葉
  • 「気」の働きを最大限に生かした超健康法
  • 「気」と「血」と「導引術」の秘密
  • 人間は、宇宙の「気」によって生み出された
  • 「気のトレーニング」で、心と体を共に磨く
  • 「性命双修」という言葉の意味
  • 「元気」がなくなると老化が進む
  • 「元気」と「老化度」をテストしよう
  • 体の老化度をチェックする
  • 老化現象の、本当の意味
  • 導引術で、快眠でさわやかな目覚め

第2章 人間は病気では死なない

  • 「人間は病気では死なない」という早島天來先生の名言
  • 「人生の師」そして「病気治しの天才」と謳われていた
  • 「気」を使い尽くしたら、どうなるか?
  • 「病は気から」とは「病は邪気から」だった
  • 身体中の「気」のめぐりを良くする「気のトレーニング」
  • 「気が病んでいる」とはどういうことか?
  • 赤ちゃんや幼児の寝相に学ぶ
  • 体の左右のバランスが崩れている場合
  • 体の傾向を無理なく直し、体調を良くする方法
  • 腰のゆがみを直す健康術
  • ギックリ腰をおさめる行法
  • 腰の健康法
  • 健康になる秘訣は「気」に逆らわずに生きること
  • 腰を強化する
  • ブリッジ呼吸(腹部のぜい肉をとる導引術)
  • 「気の流れ」は歩き方に現れる
  • 運勢の悪い人たちの歩き方
  • 歩く姿を見れば、その人の運の強さがわかる
  • 宮本武蔵は「気」の達人だった
  • 必勝の極意は「気のパワー」だった
  • 能の世阿弥は「気」の極意を知っていた
  • 一流の人物は「気のパワー」をよく知る

第3章 「気の流れ」が良くなる食べ方

  • 「気」は、宇宙の隅々にまで満ち満ちている
  • 厄年は本当にあるものなのか
  • 「先天の気」と「後天の気」
  • 「先天の気」を大事にしつつ「後天の気」を加えていく
  • 胃潰瘍の本当の原因
  • 「食べる健康法」の落とし穴
  • 導引術で排泄力を高める
  • 旬の野菜は、安いうえ「気」がある!
  • 「身土不二」という健康哲学
  • 「あと一口」をやめれば健康になる
  • 「気の流れ」を整えて、元気を保つ
  • 食べ過ぎ、飲み過ぎは体内の気のバランスを崩す
  • 絶好調への「気」の調整をしてくれる「気のトレーニング」
  • 満腹がわかる体にする
  • 「体の声」が聞こえているはずなのに
  • 入れるのではなく、まず出す生き方
  • 必要以上に食べれば、内臓を傷つける
  • 肥満の本当の原因
  • 呼吸は「息を吐きながら行う」ことが大事
  • 「気」は呼吸によって養われる
  • 導引呼吸の方法

第4章 「気」でストレスは乗り越えられる

  • ストレスの正体を直視しよう
  • ストレスについて述べている「杞憂」の寓話
  • 魔物が病気の原因ではなかった、という『荘子』の寓話
  • 我執があると、「気」が停滞する
  • 心身が健康で、素敵な、運の良い人間になる秘訣
  • 「気の導引術」で人生が変わる
  • 「気のトレーニング」で自然に元気が戻ってくる
  • 「気」で人生の扉を開こう
  • 新しいことに慣れない、という思いを放かす
  • 人生の扉を開くには、まず実践を
  • 動功術は「気の護身術」
  • 健康と性格と運命の関係

第5章 「気」で危険を察知し予防する

  • 危険な時代を生き抜く
  • 危ないと思ったら行動する
  • 欲を放かしてみれば「気のパワー」が発揮される
  • 天災への対応能力
  • 毒を感知するセンサーを磨く「気のトレーニング」
  • 「気のトレーニング」の原点
  • 老子に圧倒された孔子のエピソード
  • 導引も、中国医学も中国武術も、原点は老子の教えにある

第6章 「気」で美しくなる

  • 「気のトレーニング」は容姿端麗の秘訣
  • 自分にしかない美しさを磨く
  • 「気のトレーニング」で内臓からキレイになる
  • 酒風呂は若返り、美肌にも効果的
  • 冷えは「美容の大敵」
  • 冷え症の仕組み
  • 酒風呂と早島天來先生
  • 西洋医学と東洋医学の大きな違い
  • 東洋医学が見直されている理由
  • 誰にでも簡単にでき、副作用などの心配もない導引術
  • 酒風呂の卓効の秘密
  • 酒風呂の入り方
  • プラシーボ(偽薬)効果と「気」の力

第7章 「気」で若返る秘訣

  • 「人生は、晩年がいちばん幸せだ」
  • 不老不死について
  • 長生きしたくないという考え方について
  • まず体を健康にすることから始めよう
  • 霞を食べる仙人
  • 「気」を食べる導引術
  • 西王母と漢の武帝の話
  • 我執があっては仙人になれない
  • 悪い「気」を振り棄てるスワイソウ
  • スワイソウのやり方
  • スワイソウの素晴らしい効果の秘密
  • スワイソウを実施するときの大切なポイント
  • 達人が長生きする理由とは
  • 豊かで楽しい人生を開く「気のトレーニング」
  • タオイストの六十歳は「元気盛り」
  • 死ぬまで元気に生きられる
  • 天の運気が引き寄せられる
  • 明るい「気」がもたらす、本当に豊かな人生
  • 導引術についてのご注意