2021/09/24 18:45
人間の幸せって、いったい何なのでしょうか。
どんな人生を生きることが、本当に幸せといえるのでしょうか。
人類はこの「幸福」について長い間考え、研究し、書かれた書物が古来たくさん出版されてきています。
人間として生まれて、そして優秀な頭脳を持ち、社会性をもった私たち人間は、当然、野生動物よりはずっと幸せな人生を生きられるはずである、そう思えます。そのために私たちは複雑な思考をする頭脳を与えられたのだと。ところが実際のところは、働き盛りの人生真っ盛りの人々の間に鬱病が増え、自殺がなかなか減ってはいません。そして価値観が多様になったことにより、この複雑な社会を生きる現代人が皆、幸せそうな顔をして生きているだろうかと考えると、どうもそうなってはいないのが現実のようです。
早島天來(はやしまてんらい)という人はそんな私たちに、
「もっと楽しく生きてゆきなさい。この広大な宇宙は、この世に命を享(う)けた者、誰もが幸せになるように、この世界に君たちを生み出してくれたのだから。そんな難しい顔をするな。笑ってみぃ。」
そう優しく言うのです。
そして、人間社会の中で、人は成長するために苦労をして苦しんで生きるものであり、成長し、人生に成功したものだけが幸せになれる、という考え方でなく、天地自然に生かされた私たちが小さな命を、精一杯、元気に楽しく生きてこそ、最も幸せで、充実した人生が生きられるのだ、というTAOの真理を、私たちに伝え続けました。
無為自然に天地自然に添って生かされてゆけば、人は誰もが幸せに生きられる、ということを、人生をかけて伝え続けたのです。
TAOに生きる、タオイズムとは
古代中国の人々は、星の運行や、天地自然の変化などを観察した結果、この世の万物は生命があるものだけでなく、石ころや山などの存在も、すべて宇宙に貫徹する原理原則によってこの世に生み出され、そして運行されていると考えました。そして、この宇宙の原理原則を「道」TAOと名づけました。
また、この宇宙の原理原則は人間がいくら研究し、変えようと思っても手を出せるようなものではなく、この「道」TAOに添(そ)って生かされることが、人間にとって最も健康的で幸せな生き方である、と考えました。そして天地自然に添って人間が生きるための方法として、野生動物の動きや変化を研究して、人間が健康になるための「導引」が生み出されました。
紀元前5世紀ころには「道」、無為自然を基本とした哲学をまとめ上げた『老子道徳経 (ろうしどうとくきょう)』が書かれて、タオイズムの思想の中心となりました。
早島天來が伝えたかったこと 「TAOを学べば幸せになる」
早島天來(筆名・正雄)は、この中国に生まれた「道」TAOの思想、つまりタオイズムを、江戸時代の書物などを紐解き、研究し、修練を重ね、現代人に合わせて体系化したのです。
そして本場中国や台湾の道士や研究家とも交流を重ねて、昭和44年、時代の流れで、台湾に道教の最高責任者である張(ちょう)天師がおられたころに、台湾を訪問して多くの方々の難病を治し、その力を認められて、はじめて中国以外の人として道家龍門派伝的第十三代を継ぐことになったのです。また、併(あわ)せて道教の最高機関である嗣漢天師府顧問となりました。
帰国して、さらに修練を積んだ早島天來は、昭和55年にタオイズムを修業できる日本道観を設立し、タオイズムを学べる道家道学院という学校を設立しました。現代日本において、これまであまり公にされてこなかったタオイズムの研究と修業そして普及に人生を賭けたのです。
その根本思想は、「人はみな幸せになるように生まれて来たのだ」というこの真理を、TAOを学ぶことによって皆に伝える、ということだったのです。
早島天來のことを私たちは、限りない敬慕の思いをもって「天來大先生(おおせんせい)」と呼んでおります。
苦難を乗り越えてTAOにめぐり会った天來大先生
天來大先生の人生は、実は幼少時から苦難の連続でした。生まれたときに母親が階段から足を踏み外して落ち、7ヵ月の早産でこの世に誕生しました。そのため、幼少の頃は病弱で、何度も「この子供さんは、もうだめでしょう」と医者から言われたそうです。
しかも高知城造営の祖である大高坂(おおたかさ)家に長男として産まれながら、父親同士の話し合いによって、子供のいなかった早島の家へ養子に出されるという複雑な家族関係の中で育ちました。また、勝ち気だった思春期に覚えた、どこにもぶつけようのない怒りや、第二次世界大戦で徴兵されて戦地で命を落としかけたことなど、たくさんの苦難を乗り越えたのでした。
天來大先生はそれらをすべて人生の修業として、試練を乗り越え、昇華し、魂を磨いて成長してゆき、無為自然のタオイズムに辿(たど)り着いたのです。
天來大先生は書いています。
「TAOにめぐり会うまでは、私の人生は、心もそして生き方も貧しかった。だが、TAOにめぐり会うことによって、心も休も豊かになり、本当に幸せになった。このご恩を、このタオイズムを生み出し残してくれた中国の人々に、いつか時が来たらお返ししたいと思っている。」
天來大先生はすでに1999(平成11)年に登仙(とうせん)されましたが、残されたたくさんのTAOの言葉は、今もそれを読む私たちに勇気を与え、生きる喜びを思い起こさせてくれます。
天來大先生は、ご自身が人生の苦難を乗り越えて手にしたTAOの真理を、私たちに教えてくれているのです。
「私たちは自力でこの世に生まれて来たわけではない。宇宙の大きな力、『道』TAOによりこの地上に生み出され、そして不思議な『道』TAOの原理原則に添(そ)って生かされている。そして人は誰もが皆、幸せになるためにこの世に生まれて来ているのだよ。君のその我執(がしゅう)さえ放(ほ)かせば、そう、今から幸せに生きられるんだ。」と。
時代を超えても、その言葉はますます新しく、生き生きと私たちの心を打ちます。それというのも、これこそ時代も国も民族も超えた、宇宙の真理、タオイズムそのものだからです。
危機の時代にこそ必要とされるTAO
地球温暖化現象が進み、2011年3月11日の、あの悲劇の東日本大震災以降も、日本だけでなく世界で、度重なる天災が続いています。人間が破壊しつづけてきた地球において、人の力ではどうすることもできない天地自然の大いなる力を思い知らされ、明日何が起きるかわからない、そんな現代を私たちは生きています。
未来の子供たちにより良い地球を、幸せな人生を残そうと思うとき、まず私たちが、与えられたこの大切な人生を、今という時を、力を合わせて明るく元気に生きること、陽気に無為自然に生きぬくこと、ここからスタートすることが、次の世代のために何より大切な生き方なのだと思うのです。
今こそ、このTAOを世界に発信したい、この願いが叶って、このたび、早島天來のTAOの言葉をこうして中国語、英語の翻訳を添えて出版できたことは、何よりの幸せに思います。
早島天來の誕生日である3月3日を出版の記念の日として、世界に「TAOの幸せになる言葉」が届きますように、そしてこの本を手に取られた読者の皆様の心に、早島天來が伝えたかったTAO、無為自然に生きれば皆が幸せになれる、という温かいメッセージが無事届きますことを心より祈っております。
このたびの出版におきまして、大変お忙しい日程のなかで中国語に翻訳してくださった首都師範大学日本文化研究センター長の李均洋教授、そして素晴らしい英語に翻訳してくださった玉置百合子様のおかげで、世界の皆様にも、この国境や人種、宗教を超えた無為自然の宇宙の真理、タオイズムの言葉を読んでいただけることを何より嬉しく思い、心からの感謝をお伝えしたいと思います。
TAOの言葉を通して、みなさまに幸せが届けられますように――